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さすが
宮本卯之助商店さん、営業担当の方からご連絡をくださり、6月に北二町会の山伏会館でお話を伺うこととなった。この営業担当の方も台東区内の町会青年部に入っておられお神輿が大好きとのこと。想定していた時間を上回り、いろいろな話を伺うことができた。
「ありがとうございました!」
まず最初に、宮本卯之助商店の過去の記録を探してみたが昭和28年の山伏町会の記録は見つからなかったとのこと。そんな簡単に「ルーツ」には辿り着けるわけもなく、北二町会神輿の写真をお見せして鑑定に取り掛かっていただいた。
まず注目すべき点は、てっぺんの鳳凰が刺さっているところ。ここの形状には制作者の特徴があり、大まかな判断ができるようだ。しかし写真だけでは限界があり、神輿一般の話での推測しかできなかった。
岡田青年部長が遅れてやって来て、山伏会館内の倉庫にあるお神輿を見ることができるとわかり、がぜん盛り上がる面々。箱の上部・側面を開けできる限りの範囲で見ていただいた結果、北二町会神輿は次のような形状であった。
『屋根唐破風神社型神輿 二尺一寸 白木造(総彫品)』
屋根:梨地漆塗仕上げ
【お神輿まめ知識】
お神輿の大きさ(北二町会神輿は二尺一寸)は、前面の銀色の金具(通称:かみそり)の部分を測る。
前篇でも書いた通り、彫刻が素晴らしい神輿であることも判明した。聞き慣れない神輿専門用語が多数であるが、現時点での記録として記す。
※「(?)」は狭く暗く、また裏側で見えなかったことによる推測。
・懸魚(げぎょ:屋根下)=四鳥(鳳凰・梅に鶯・雉(?)・松に鶴(?))
・木鼻(きばな:わらび手の下)=龍頭
・桝組(ますぐみ)=龍頭・犾獅子
・狗犬=獅子(阿・吽)
★籠彫りという大変難しい彫刻。獅子が抑えている籠の中に玉が入っているが
後から入れたのではなく刳り貫きつつ籠の中に玉を残す技法。
・上長押(かみなげし)=十二支
★子が正面に来ている。最近では午が正面(南)に来ることが多いが、
これも昭和28年製を物語っている。「子午線」で南北を表す。
・戸脇彫刻(堂柱)=昇り龍・降り龍
・唐戸(からと)=牡丹(サヤ彫)
★牡丹は獅子を示す。(「唐獅子牡丹」という言葉の通り)
・下長押(しもなげし)=波に千鳥(⇒子供の成長を願う)
・鳥居=三頭の龍(正面の龍・昇り龍・降り龍)
・堂羽目(どうばめ)彫刻=天の岩戸・翁と媼(⇒長寿を表す)
・台輪(鋳物金具)=四神(⇒東西南北を表す。朱雀(鳳凰)=南・青龍・白虎・玄武)
<梨地漆塗仕上げの屋根>
<三頭の龍の鳥居(下長押の「波に千鳥」も見える)>
<北二町会神輿全体>
大変凝った彫刻が施された素晴らしいお神輿だとの見立てであった。お神輿は大きいことが重要ではなく、どれだけ凝った造りになっているかが重要なのだそうだ。昭和28年当時の先輩方は正しい選択をしたということである。特筆すべきはやはり籠彫りの狗犬。これで価値がかなり上がっているとのことであった。
見てくださった営業の方曰く、
「このお神輿を金額にするとゼロがたくさん並びますが、お神輿の価値はそうではありません。北上野二丁目町会で60年以上渡御され、今も、そしてこれからも渡御していく皆さんが価値を見出し守っていくものです」
ということであった。
最後に肝心の北二町会神輿の「ルーツ」であるが、今の段階では宮本卯之助商店製の可能性は30%ということであった。宮本卯之助商店製の神輿では伝統としてここをこんな風にはしないという箇所があったためであるが、昭和28年当時はたくさんの町会が一斉にお神輿を発注・購入した時期であり、下請けに出して制作することも多かったようである。あくまで可能性であるが、向島にあった「志布」製ということも考えられるとのことであった。
岡田青年部長も知らなかったことがたくさん判明した、宮本卯之助商店編「ルーツ」探しであった。そして「志布」というキーワードが残されたことで「ルーツ」探しはまだ続くのである。
次回の記事は。。。気長にお待ちを。
北上野二丁目町会神輿のルーツを探して
宮本卯之助商店編
了
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ではまた次回。